「断酒の活動、頭打ち」をどう考えるか

http://digital.asahi.com/articles/TKY201308090450.html より転載
断酒の活動、頭打ち 治療は4万人「依存症のごく一部」



 アルコール依存症の人たちが集まり断酒を支え合う自助団体が、参加者の減少や頭打ち、高齢化に直面している。治療するアルコール依存症の患者はここ20年、推計で4万人前後で推移しているが、未受診も多い。若者や女性、新しい人たちが参加しやすいように、改善に乗り出す団体も出ている。
 東京都内に住む30代の男性は5月から週2回、依存症の人たちが経験を語り合う断酒会に参加する。
 「断酒1カ月の人に話を聞いても参考にならない。断酒が続いている先輩からのアドバイスが欲しかった」
 断酒会は中高年の男性が多いが、「よかった」と感じている。依存症は飲酒によって起こした職場や家族とのトラブルが尾を引く。「定期的に通うことで忘れないし、他人の体験を聞くことで断酒のモチベーションにつながる」
 実は一度、自己流の断酒で失敗している。「周囲に断酒する人がいなかったし、医者にもかかっていなかった」
 厚生労働省の研究班の推計では、依存症の疑いのある人は440万人、治療が必要な人は80万人。一方、厚労省の患者調査は、継続的に治療する人を推計。過去20年、3万人台から4万人台で推移。専門医は「受診患者は一部」とみる。
 依存症や一歩手前の有害使用(危険な飲酒)は生活習慣病の4大リスクで、5月の世界保健機関の総会で、20年までに各国が10%減らすことが決まった。依存症は完治が難しく、断酒補助剤の効果も限定的だ。回復するには、生涯、断酒を続けるしかない。


 ■若者・女性は敬遠


 断酒が続くように患者同士で支え合う全国的な自助グループが、全日本断酒連盟(全断連)やアルコホーリクス・アノニマス(無名のアルコール依存症者たち、AA)だ。ただ、課題を抱えている。
 全断連の会員のピークは1994年度の1万2012人。2012年度は8575人で右肩下がりが続く。60歳以上の割合は12年度が57・7%で6割に迫る。大槻元・事務局長は、医療機関デイケアの充実に加え、生活保護が利用しやすくなったことで「仕事のためにお酒をやめない傾向がある」とみている。高齢者ばかりの断酒会では、若者や女性が敬遠してしまう。
 全断連は11年12月、若い人や女性が入りやすくするための行動計画を作って、改革を始めた。自分の経験を語る例会は「武勇伝と近況報告は慎む」ことにして、今後は若い人や女性だけの例会も設ける予定だ。お酒のトラブルに関する相談にも力を入れ、医療関係者との連携も深める。
 AAは会員制ではないが、5000人台とみている。男性は50代、女性は40代が中心だ。AA日本ゼネラルサービスの増田栄治所長は「日本は『飲みにケーション』という社会があるし、依存症を知る機会が少ない。AAも知られていない」と話す。昨年から、厚生労働省のアルコール問題の検討会に委員として積極的に参加したり、アルコール問題の学会で活動を発表したりするように変えた。
 新たな問題も起きている。大阪府和泉市アルコール依存症専門の新生会病院の和気浩三院長は「定年後の発症」に注目する。和気院長は富田林保健所でアルコール相談をしているが、10〜12年の相談は高齢者が半数を超え、70代以上が最多。定年後の男性は、地域とのつながりが薄く、時間を持て余し、依存症に陥る人が多いとみる。
 実際、全断連の入会時の年齢が60歳以上の割合は12年度が25・2%で年々増加中だ。
 和気院長は「人間関係を回復して、居場所を見つけ、心が健康になっていくには、自助グループの力は大きい」と話す。体験談を話すことにプレッシャーを感じる人もいるが、「一番大事なのは聞くこと。古い人は新しい人の姿をみて、自分のことを思い出すことです」と話している。(岩崎賢一)


 ■全日本断酒連盟 本部(東京)
 電話03−3863−1600 FAX03−3863−1691
 http://www.dansyu−renmei.or.jp/
 ■アルコホーリクス・アノニマス
 日本ゼネラルサービスオフィス(東京)
 電話03−3590−5377 FAX03−3590−5419
 http://www.aajapan.org/


*若い男性(特に「草食系男子」)や女性では、アルコール依存症が減少する一方で、自傷行為などそれ以外のアディクションが増加しているのではないでしょうか?