<病抜け>ということ

 「不安定の安定」とも言われる境界性パーソナリテイ障害について、精神科医中井久夫さんが、「医師が治そうとすると治らない。医師は、患者がいつか<病抜け>していく日をただじっと待つべきである。」と述べていました。我が身を省みるにつけても、その通りだと思います。若い頃苦しめられた寂しさや恐怖は、いつの間にか消えていました。自己愛的傾向から脱して、他者を愛するようになったからでしょう。若い頃は、原始的な防衛機制である「否認」や「投影的同一視」(自分怒りを相手の怒りのように感じること、鏡を見ている状態)をしばしば用いていたことも、今ではしっかりと自覚できるようになりました。