現代日本の若者と「自分」

 今年、授業で「DVとは、親密な領域において相手の個的領域を奪うことである」という宮地尚子さんによるDVの定義を紹介して、学生に「あなたにとって恋人に奪われたくない個的領域は何か?」という小レポートを書かせてみました。もちろん、「束縛されていないと不安です」という被害者予備軍のような女子学生もいました。しかし、その学生のレポートを次の授業で匿名で読み上げると、期末レポートでは「同性・同世代にそんな人がいるなんて、驚きました。」という反応がありました。学生のほぼ全員が、奪われたくない個的領域として「自分だけの時間・空間」を真っ先に挙げました。次いで多かったのがケータイとパソコン、3番目に、男女ともに「自分のファッション」を挙げました。もちろん、裏を返せば、恋人のケータイやファッションを自分のコントロール下に置きたがる人がまだまだいる、ということでしょう。しかし、「自分のファッションに口を出さないでほしい」という若者が、将来コアなDV(物理的暴力と脅迫)を我慢するとは思えません。「家族の世紀」(上野千鶴子)でもあった20世紀が終わって、日本の若者の「自分」、文字通りの「自らの分」は、大きな流れとしては強化されつつあるのではないでしょうか。